レッドゾーン

ハゲタカシリーズの第3弾。1年越しくらいでようやく図書館で借りることができました。

レッドゾーン(上)

レッドゾーン(上)

レッドゾーン(下)

レッドゾーン(下)

伝説の企業買収者となった鷲津が、今度は中国ファンドと、日本を代表する自動車メーカーの買収を巡って攻防を繰り広げます。その一方で、鷲津のライバル(?)である業界屈指の企業再生家(ターンアラウンドマネージャー)としての地位を築いた芝野は、すでに立ち直りを見せる企業を見て引き際を感じ、今度は大企業から一転、馴染みのある小さな町工場の再生を目指す。2(『バイアウト』文庫では『ハゲタカ2』)までで様々な戦いを繰り広げた2人が、企業買収と企業再生という目的のため、全く異なる道を歩むように見えるが、どちらも今の日本が抱える問題を捉えており興味深い。
中国資本が世界を席巻しつつある様は、バブル絶頂期に「Japan as No.1」を標榜して世界を買い漁ったときのようでもあるが、貿易黒字によって膨れ上がる外貨準備高にも国防をアメリカに頼る日本とそうでない中国とでは外交カードの切り方が異なり一概に「同じ」扱いはできない。
作中で描かれる中国経済の発展とそれに追いついていない法意識は、先日の人民元切り上げや昨今日本で事件にもなっている事柄とリンクする。また、安い人件費を元に世界の工場としての地位を築いて貿易黒字を増やしてきたが、今後インフレが進み人件費が上がってきたときに外国企業がさらに人件費の安い国に工場を移したとしたら中国経済はどうなってしまうのかなど、今、そしてこれからの中国と世界経済のあり方を考えさせられる。

ちなみに物語としてはこれまでの1作で3回くらいあった企業買収劇が1回しかなく、もうこのレベルになるとさすがに裏の外交交渉レベルで話をつけないとリアリティがないということなのか、ドラマチックで派手な攻防というのはなく少し残念。やっぱりマーケットでの売り買いの勝負を見たかったなぁ。